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2023.05.30

【郷暮らし手帳】子どもたちの身体とこころを育む給食


学校生活の楽しみの一つといえば給食。白川村唯一の学校「白川郷学園」に通う子どもたちにとっても、給食は待ち遠しい時間です。

午前中の授業が終わると、お腹をすかせた子どもたちが廊下に飛び出します。給食当番の子どもたちは白衣に身を包んで配膳を進め、準備ができたら「いただきます!」。

その地方ならではの食材や料理が振る舞われることも多い学校給食。白川村の給食も、さまざまな工夫や、特色ある取組みが実践されているということで、取材に伺いました。

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お話を聞いたのは、栄養教諭の川原昌士先生。2021年4月に白川郷学園に赴任されました。

「白川村の給食は、すべて白川郷学園の横にある給食センターで作られています。学園だけでなく、保育園の給食も作っていますよ」。

給食センター

白川郷学園と保育園に通う子どもたち、先生などの職員を合わせ、給食センターで作られる給食は毎日約200食。複数の学校をまとめて作ることも多い他の自治体と比べると、量は少なめです。その分、メニューを柔軟に組み立てることができたり、手作業も多いため“家庭料理”っぽさが出るそう。

「給食の特徴としては、村の素材をふんだんに取り入れているところですね。地域の方々にいろいろな食材を提供してもらっています」。

結旨豚に、サンフラワーさんや大田ファームさんのお米や野菜、白川合掌豆腐宮部豆腐店さんや深山豆富店さんの豆腐やすったて…さらにマイタケやキクラゲなども村で採れたものを活用。自分たちの地域で育てられたものを、地域でいただく“地産地消”が日常的に実践されています。

さらに、白川郷学園ではただ「食べる」だけでなく給食を「作る」「考える」取組みにも力を入れています。

その一つが、岐阜県教育委員会が主催する「中学生学校給食選手権」への参加。

過去に受賞した献立は食品サンプルとなって展示

白川郷学園では毎年8年生(中学2年生)が参加し、上位の成績を収めています。この選手権では、自分たちで献立を考え、決勝戦では生徒だけで調理した給食を試食してもらいます。

2022年度は飛騨産コシヒカリのタケノコご飯や、鉄分が豊富な鹿肉の唐揚げ、特別支援学級の児童生徒が作ったじゃがいもとパプリカの中華和え、白川郷土産で人気の「紫蘇もなか」の皮を使った中華スープといった、地域の食材を活用し、見た目や栄養バランスにもこだわった献立で大会に挑戦。白川村らしい地域や人とのつながり“結”も表現されたメニューは、見事、県農業協同組合中央会会長賞を受賞しました。

2022年度の中学生学校給食選手権の献立(県農業協同組合中央会会長賞受賞)

もう一つの取組みは、「結クラス希望献立」。コロナ禍で黙食となった給食の時間をなんとか楽しくしたい、という生徒や先生の想いから始まったものです。

「結クラス」とは、白川郷学園の1〜9年生の縦割りグループのこと。休み時間や掃除、給食などの時間の多くは、結クラスで過ごします。

「結クラス希望献立」は、その年のテーマに沿った給食について結クラスで話し合い、献立を作りあげるというもの。2022年度は“ヘルシー”をテーマとした9つの献立ができました!

「完成した献立は、給食センターで調理され、給食としてみんなでいただきます。子どもたちは自分たちで作ったメニューを食べるのをとても楽しみにしていて、“今日はあの班の献立だよね”と話しています。コンテスト形式で行っているので、それぞれの給食を互いに評価して、グランプリも決めているんです」。

「結クラス希望献立」を通じて、子どもたちがより給食や食事を楽しむようになったと、保護者からも好評なのだそう。

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白川村の給食を一任されている栄養教諭は、他の自治体より規模は小さいながら、一人でやらなければならないことも多いそう。それでも、大変さよりも「やれることがたくさんあることが楽しい」と川原先生は語ります。

「給食を、ただの食事の時間で終わらせてほしくないんです。その献立や素材の裏にあるストーリーや背景を知ることで、給食がより楽しく、学びの多い時間になればいいなと思っています」。

今後は、古代米やもち麦、まこもだけ、サンフラワーさんのいちじくなど、まだ活用できていない村の食材を給食に取り入れたい、と意気込みます。

「子どもたちの日々の暮らしや遊びの中にあるものと、食を結びつけていけるといいですね」。

子どもたちの身体とこころに健やかにする給食。

白川村では、食べるだけでなく、考え、作ることによって、村の自然や、産業、文化など、さまざまな面に目を向けるきっかけや、コミュニケーションを育む場にもなっています。

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