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2021.07.13

世界一おいしい米を白川郷から/大田ファーム


昨年11月、あるニュースが村を湧かせました。白川郷生まれの米が、米の国際大会で金賞を受賞、世界トップ18に選ばれたのです。快挙を成し遂げたのは「戸ヶ野のこしひかり」をつくる大田ファームの大田剛之さん、妙子さんご夫妻。村唯一の専業農家として、試行錯誤を繰り返しながら、米や野菜を育てています。

Uターンを機に、「農」で生業を。

5月下旬から6月初旬の白川村は田植えのシーズン真っ盛り。村内にぽつりぽつりとある田んぼは水をたたえ、青々とした稲が初夏の田園風景を彩ります。

村では多くの家が田畑を所有しているものの、古くから農業を生業とする家はありませんでした。

そんな農業未開拓地で、大田剛之さん、妙子さんは2012年に新規就農。村唯一の専業農家としての道を歩んでいます。

もともと、10年にわたって土建業に就き、その後大手工場に勤めていた剛之さんは農業は全くの素人。契機が訪れたのは2009年のことでした。リーマンショックで仕事が激減し、出身地である白川村戸ヶ野地区へのUターンを考えていたとき、村の営農組合の人材募集の情報が目に止まり、農業の世界に足を踏み入れることとなりました。

「いつかは村に帰るだろうと思っていたので、その時期が来たという感じでしたね。Uターンは前向きでした」

営農組合では、村民からの田植えや機械作業を受け負い、農業に携わるなかで、徐々に自分自身のやりたいことが見えてきた剛之さんは、2012年、夫婦で独立。「大田ファーム」を設立しました。

農業未開拓地でのチャレンジ

今でこそ村内外に認められている大田ファームですが、独立当初は苦労の連続だったといいます。

村には農業の先輩がいないだけでなく、おいしい米や野菜をつくっても、各家庭で食べる分はそれぞれの土地で栽培していることが多く、売り先がありません。

「村民には売れないし、観光客が野菜を買うことは考えにくい。村で売るという発想をやめないといけませんでした」と振り返る妙子さん。

二人は試行錯誤を重ね、黒にんにくやそば、甘酒など、加工品も含めて販売網を広げていきました。妙子さんが担当する30種類以上もの野菜は、ECサイトでセット販売するほか、学校給食で村の子どもたちにも食べられています。

世界一の米を育てることは、村の景観を守ること。

「飛騨米は全国的にレベルが高いのにまだ知名度が低いんです」と、過去の大会の分析結果をまとめた分厚いファイルを手に、悔しそうに呟く剛之さん。実際に飛騨の農家の米はこれまでにコンクールでの入賞歴が多数あり、米どころ新潟に匹敵するほど品質の高い米づくりをしています。

大田ファームが「第22回米・食味分析コンクール国際大会in富士山」の国際総合部門で最高金賞を受賞、さらには東洋ライスの「世界最高米」の原料米として選ばれたことは、飛騨地域の一員として、肥料の試験や水の管理などあらゆる研究を重ね、レベルの高い環境で米づくりに取り組んできたことの結果でもあります。

コロナ禍での受賞で式典がオンラインで開催され、受賞の実感を持てずにいた大田さん夫妻の励みになったのは地域からの祝福の声でした。

「役場には垂幕まで飾っていただいて、村の人たちに喜んでもらえたことがとても嬉しかったです」

白川村では2019年に「白川郷おいしいお米プロジェクト」がスタートし、役場や大田ファームをはじめとする農家が手を取り合って「白川郷こしひかり」のさらなるブランド化に取り組んでいます。「現状で満足することなく研究を続け、楽しみながらもっとおいしい米づくりをしたいです」。

付加価値の高い米をつくることが世界遺産の景観や田んぼを守ることにつながると信じ、大田ファームは夫婦二人三脚、これからも世界一の米を目指します。

大田ファーム

白川村認定農業者。ブランド米「戸ヶ野のこしひかり」のほか、にんにく、そば、ブロッコリーをメインに栽培。白川村産の米のブランド化にも積極的に取り組む。

HP/https://ota-farm.crayonsite.com/

直売所 長助

住所/岐阜県大野郡白川村鳩谷486-1
営業時間/ 10:30〜15:30 不定休 (冬季休業11月〜4月下旬)

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