飛騨日日新聞

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2023.01.31

【対談/移住ってどう?】移住者、若者との交流


移住に関するさまざまなテーマで対談する「移住ってどう?」。今回は、長年白川村で暮らし、移住者や若者をあたたかく見守っ てくれる“村のおばあちゃん” の佐藤さん、蟻原さんに、白川村の特徴的な相互扶助の精神「結(ゆい)」をはじめ、村民同士の助け合いや交流についてお話を伺いました。

佐藤 直子(さとう なおこ)さん

白川村小白川地区で生まれ、結婚を機に白川村荻町へ。呉服屋を経て、現在は「喫茶さとう」を切り盛りする。愛称は「なおちゃん」。

蟻原 基子(ありはら もとこ)さん

白川村鳩谷地区で生まれ育つ。かつては看護師や薬種商として働き、現在は役場近くでゲストハウス「Ant Hut」(アントハット)を営む。愛称は「もっちゃん」。

お二人は普段から移住者や若い方と交流されていますが、何かきっかけはあったのでしょうか?

佐藤:地域おこし協力隊の制度が始まった頃、よく協力隊の子がうちに訪ねてくれて、関わりができたね。

蟻原:うちのゲストハウスに「白川郷トヨタ自然學校」の就職試験を受ける子たちが泊まってくれてね。その子達が村に就職してからも、遊びに来てくれるんやよ。

蟻原さんが営むゲストハウス「Ant Hut」(アントハット)

具体的にはどんな交流があるのでしょう?

佐藤:「喫茶さとう」でアルバイトしてもらったり、インターンで村に来た大学生が荻町の店で働いてたときは、仕事が終わってからみんなでうちで夕飯を食べたり、料理が好きな子には白川村の郷土料理を教えたりもしたよ。

佐藤さんが営む「喫茶さとう」

蟻原:一緒に山菜採りに行って山でご飯を食べたり、ゲストハウスで話したりしてね。何でもない世間話だけど、嬉しかったことや悲しかったことをいろいろ語りあったんや。

佐藤:他人を自宅にあげることに驚く人もいるけど、特別なことは何もしてない。食事も漬物とか豆腐ステーキとか、簡単なものを食べてくれたよ。

蟻原:無理をすると続かないから、いつも自分が食べているもので、おもてなししないとな。

白川村の人は親切な方が多いですが、お二人は特に移住した方や若い人をあたたかく迎えていますよね。何か思いや考えがあるのでしょうか?

佐藤:昔は村が今ほど裕福じゃなかったけど、もっと「結」が強かったの。そのおかげで今の暮らしがあるから、すごく感謝してる。だから、これからも結が続いてほしいし、新しく白川村に来てくれた人とも心を通わせて、助け合っていきたいと思ってるの。

蟻原:自分が知らない土地で一人ぼっちだと寂しいじゃない?だから、移住してきた人の心の拠り所になればと思ってね。

佐藤:ちょっと困った時に「あのおばあさんに話を聞いてもらおう」と思ってもらえるといいよね。信頼できる人が周りにたくさんいるほど、その土地への安心感や愛着が生まれると思うよ。

蟻原:移住の取組みも、行政だけでなくて地域を巻き込んでやらないとね。移住してきた人が関わるのは、結局、地域の人だからな。

佐藤:世界遺産に登録された頃、村で講演会があって、その中で「白川村は“ピーマン”にはならないように」って言われたの。合掌造りの外側を守るだけではなくて、中身が空洞にならないように、とお話されて、それがすごく印象に残ってる。

蟻原:“中身”というのが、白川村だと結の精神や、助け合うことなのかもしれないね。

佐藤:移住する人も、やっぱり結を大切にしてくれる人がいいね。甘えたり、頼りっぱなしではなくて、一人一人やれることは自分でやりながら、それが茅葺き屋根の茅のように束になって、助け合える関係にできたらいいなと思うんや。

蟻原:今はだんだん結が弱くなっているから、改めて村民も助け合う心を育てないとね。移住した人に“よう来てくれた”って気持ちを伝えていかないと、って思うよ。

そういった心を育てるにはどんな取組みが必要だと思いますか?

蟻原:村の未来について、みんなで腹を割って話せる場があればいいなと思う。同じ思いの人が集まって、そこに移住してきた人も加わって、自分事として村のことを考える人が増えていくと、すごくいい村になると思うよ。

佐藤:昔からの白川村の良いところを大切にしながら、いい考えは取り入れることができると、もっと住み心地がいい村になっていくんじゃないかなあ。

ー飛騨日日新聞編集部も日頃からお世話になっている「なおちゃん」と「もっちゃん」。お二人に持参していただいたお茶やお菓子をいただきながら、和やかな雰囲気で取材も進められました。そして、取材後はなおちゃんのご自宅にお邪魔して手作りの稲荷寿司やお漬物もごちそうになりました。お二人のような“村のおばあちゃん”の存在は、新たに白川村で暮らしを始める方にとっても、きっと心強いことでしょう。

今回の対談会場

今回、対談を行った会場は、飛騨日日新聞の拠点である白川村荻町の白川郷合掌文化館(旧松井家)。取材を行った11月の終わりは、ちょうど雪囲いが終わり冬の支度が整っていた。

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