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2024.02.14

【郷暮らし手帖】秋の一斉放水訓練


毎年、10月末から11月上旬に白川村荻町の合掌造り集落で行われる「秋の一斉放水訓練」。

集落内にある60基の放水銃から一斉に水のカーテンが放たれます。

この幻想的な光景を一目見ようと、毎年多くの観光客が訪れ、多数のメディアにも取り上げられますが、実は、放水の目的は観光ではなく防災。

(左から)藤坂俊幸さん、野村昭吾さん

そんな一斉放水について、消防団の中部分団長である藤坂俊幸(としゆき)さん、荻町区長である野村昭吾さんにお話を聞きました。

茅葺きの合掌造りは火に弱く、一棟に火災が起きてそれが燃え広がると、他の建物でも火災が起きる可能性が高くなっています。最悪の場合は、世界遺産である集落全体に火災が及ぶ危険性もあるのです。

そのため、放水は“消火活動”ではなく、家屋と家屋の間に水のカーテンをつくるとともに、集落全体を霧が覆うことで延焼を防ぐために行われます。

そして、いざというときに放水銃がきちんと機能するよう、点検のため、50年ほど前から一斉放水訓練が行われています。

放水銃を扱うのは集落に暮らす村民。

訓練当日、朝8時のサイレンが鳴ると、合掌造りを模した放水銃の収納箱が開かれ、集落の方々から30メートルにもなる水柱が一斉に立ち上がります。

展望台からその様子を臨むのは、消防団の中部分団長である藤坂さん。水の上がり具合などを見て、放水銃の機能に問題ないかを確認します。

5分ほど続く放水が2回行われ、一斉放水訓練は無事に終了。

白川郷の湯は2023年4月末に営業を再開

2022年2月に発生した白川村荻町にある「白川郷の湯」の火災では、懸命な消火活動が行われましたが、一名の方が命を落とすという大変痛ましい出来事となりました。

荻町区長の野村さんも、「本当に集落全体に燃え広がるのではないかと思った」と語ります。

この火災を受けて、荻町の防災意識は高まっていますが、「いっそう意識を高めていきたい」というのが消防団や区民の想いです。

2023年は一斉放水訓練後に村の防災訓練も実施されました。避難訓練や安否確認、荻町多目的集会施設での展示企画なども行われ、村民は多様な面から防災について学び、意識を高めました。

「日本の原風景」とも称される美しい合掌造り集落。その維持は、村の文化や歴史を想う村民一人ひとりの尽力によって成り立っているのです。

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